東京調布市を中心に副業や起業の情報交換をするビジネスサークル

イベント参加申し込み

最新情報

INFORMATION

2023.02.20コラム

コラムvol.6「主催者の副業・起業体験談」

コラムの目次

●一度目の起業失敗と会社員への逆戻り
●お小遣い月3万円弱を脱却するため副業にチャレンジ
●副業初年度の売上はわずか4万円
●新型コロナ禍で突然訪れたビジネスチャンス
●会社員生活の閉塞感を感じて二度目の起業を決意
●二度の起業経験で実感した副業・起業において大事なこと

一度目の起業失敗と会社員への逆戻り

一度目の起業は、27歳の時でした。最初に就職した法律事務所が急成長し、創業メンバーであったため事務局長になっていた私。自分は「何でもできる」と過信し、メディアや書籍で目にする成功を収めた起業家の姿に憧れて、勢いだけでベンチャー企業に特化したPR会社を設立しました。幸いにして設立後まもなくクライアントを獲得することができましたが、事務所の家賃と従業員の給料を支払うと手元にはほとんどお金が残らないという自転車操業状態が続きました。

そんな折、クライアントであった製造メーカーの仕事で中国・上海に頻繁に出張するようになりました。2009年当時はリーマンショックの影響により世界的な不況に陥っていましたが、北京五輪を終えて、上海万博を控えていた中国は別世界のように経済が急成長。若輩者ながら中国という未知の隣国の急成長を肌で感じ、中国に対する情熱が一気に湧きあがりました。独学で中国語を必死に勉強して、何とか中国語検定3級に合格。起業していたPR会社を休眠させ、中国・上海にある日系PR会社の職を得て、2011年2月に中国・上海に渡りました。

定住を開始したばかりの頃の中国での仕事・生活は、言葉の壁もあり、困難の連続でした。特にお金に苦労し、出張先でのタクシー代20元(当時のレートで約300円)の持ち合わせがなく、先輩に出してもらったこともあるほどでした。しかし、5年が経過した頃には中国語も話せるようになり、ようやく好転し始めます。転職を経て2社目の日系PR会社では、在上海日本国総領事館や現地大手日系企業のクライアントを獲得することができ、上海で日系ナンバー1のPRチームを作り上げることができました。また、その後は全くの異業種である製薬会社に転職。事業開発マネージャーとして日本の医療機器のライセンス導入やアライアンス業務を担当し、2018年には同社のイノベーションアワードを受賞することができました。

そして、2018年末に日本に本帰国します。8年ぶりの日本での生活に不安を抱いていましたが、上海で知り合い、懇意にしていただいていた医療法人の理事長にお誘いいただき、都内で16医院を展開する医療法人に転職することが叶いました。そして、本帰国後は同法人の事業開発マネージャー兼広報担当として、上海でのクリニック設立やオンライン診療等の新規事業開発、広報活動全般を担当し、久しぶりの日本において充実した会社員生活を再スタートすることができました。

お小遣い月3万円弱を脱却するため副業にチャレンジ

中国から日本に本帰国し、日本の医療法人で勤務し始めた後は、上海でクリニックを設立するため毎月上海に出張をするという二拠点生活が始まりました。上海にはビジネス・プライベートですでに人脈があったため仕事は比較的順調に進みましたが、プライベートでは二人目の子供が生まれたばかりということもありてんやわんやの状態でした。そして、最も大変だったのが、またしても金銭面の問題でした。

当時妻は出産を終えたばかりで休職中の身。家族4人の生活費の財源は私の収入のみでしたので、毎月のお給料のほとんど全てを妻に渡していましたが、そうすると毎月手元に残るのは3万円以下という状況に。新しい職場に早く貢献しなければならないという焦りと、給料日にもかかわらず自由になるお金がほとんど残らないという絶望感を毎月感じていました。しかも、翌年からは住民税の支払いが始まるため、手取り額が更に減額してしまいます。なにか打開策を見つけなければと、焦る気持ちばかりが募っていきました。

そんな折、たまたま書店で橘玲さんの「お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方」(幻冬舎文庫)に出会いました。早速購入し読み進めてみると、まさに私が探していた打開策のヒントが書かれていました。この本に書かれていたことを要約すると、会社員でも会社を設立して、家賃等の生活コストを会社の経費として処理することにより、可処分所得が最大化できるというものでした。一度目の起業を失敗し、会社員に戻ってようやく生活の安定を取り戻しつつあった当時の私。再び起業をしようなどとは考えたこともなかったため、この本に書かれていた内容をとても新鮮に感じることができました。そして、毎月の可処分所得を増やすための方法について、現在の本業での昇給による場合と、本に書かれていた法人を設立して副業を行う場合を比較したところ、後者の副業の方が実現可能性の高いことがすぐに分かりました。

<可処分所得を増やす方法の比較>

本業での昇給による場合:

毎月の手取り額を10万円増やすためには、年収ベースで178.7万円の昇給が必要であり、すぐには実現不可能。
120万円 + (所得税23% + 住民税10% + 厚生年金保険料15.9%) = 178.7万円

法人を設立して副業する場合:

毎月の可処分所得を10万円増やすためには、年間売上純利益で140万円程度が必要。
120万円 + (法人住民税7万円 + 確定申告関連経費等10数万円) = 140万円

※毎月10万円を家賃等として経費計上することで、赤字となり、法人住民税のみが発生。
※年間売上1,000万円以下であるため消費税は支払い免除。

こうして打開策のヒントを得た私は、すぐに副業の準備を始めました。そして、日本に本帰国してから約5か月後の2019年5月30日に、賃貸している自宅を本店所在地にしたメディカルエクスポート合同会社を設立しました。資本金は、両親に頭を下げて借りた100万円を充てました。

副業初年度の売上はわずか4万円

一度目の起業で失敗経験のある私は、資金的余裕もないことから、今回副業を開始するにあたってとにかく「ミニマムスタート」を心掛けました。法人の形態は設立関連費用が低額の「合同会社」一択のみ。法人印もインターネットで1万円弱の安価なものを探しました。また毎月の固定費をとにかく抑えるため、賃貸の自宅を本店所在地とし、固定電話もあきらめ法律事務所勤務時代に対峙したヤミ金融バリに自分の携帯電話(もちろん格安スマホ)を法人代表番号としました。

一方で、ミニマムスタートとは言え、ホームページがなければ集客できません。そこで、インターネットで見つけた、近隣で個人事業主としてホームページ制作を行っている「SHIN DESIGN」さんに依頼し、サービス紹介・会社概要とお問い合わせフォームのみの簡易なLP風ホームページを、無理を言って格安で制作してもらいました。

事業内容は、本業で培った中国における医療・製薬業界ネットワークを活かして日本人医師・医療機関の中国進出を支援する「医療アウトバウンド」に設定しました。自分の強みが活かせて、ニッチなニーズもあり、誰もやっていないオンリーワンなビジネスです。そして、LP風ホームページの完成を待ってから、初めてのプレスリリースを配信会社のスタートアップ支援制度を利用してインターネット上で無料で配信しました。すると、プレスリリースを見ていただいた地方の大学病院に勤務する医師から早速問い合わせが入りました。開始間もない反応に気をよくした私は、早速休日を利用してその医師に会いに新幹線を使って出張に出かけました。会食で中国関連ビジネスを一緒に行おうと意気投合した私たちでしたが、結局はビジネスとして形にできず、経費だけを浪費してしまいました。

このように意気揚々に開始した副業でしたが、当初始めた事業では売上が全く立たず、本業が忙しくなったこともあり副業への情熱が徐々に冷めていきました。そして、副業第一期目の決算が終わり、蓋を開けてみると初年度の売上高はわずか4万円。一方、前述のホームページ制作費や出張費・接待交際費等の諸経費がかさみ、最終損益は大赤字を計上してしまいました。

新型コロナ禍で突然訪れたビジネスチャンス

話が多少前後しますが、この頃本業の医療法人において、ようやく上海でのクリニック設立が実現できる見込みになりました。オープン予定は2020年4月です。医療法人に入社して1年強、ようやく成果を残せると大きく安堵しました。そしてこれにより、年初の人事面談では特別賞与と昇給が了承され、副業ではなく本業で収入アップを実現できる見込みとなりました。

しかし、ここで新型コロナ禍が発生します。中国で最初に発見された新型コロナウイルスは瞬く間に全世界に拡大し、世界的なパンデミックに発展しました。そして、このパンデミックの影響は本業にも大きな影響を及ぼし、開院間近だった上海クリニックの設立プロジェクトが急遽中止となります。これに伴い、私の特別賞与・昇給の話も白紙に戻ってしまいました。

新型コロナ禍で本業での収入アップの道を閉ざされた私は、再び副業に目を向けました。しかし、副業の医療アウトバウンド事業も新型コロナ禍の影響で行うことができません。そこで今度は、当時注目を集め、自分自身も当事者として日々奮闘していた男性の家事・育児参加に関する情報商材の開発やセミナー講師を副業にできないかと考え、通信講座でお掃除スペシャリスト・整理収納アドバイザーの資格を取得し、「男家事(ダンカジ)という複業のススメ」というタイトルで出版を企画・執筆するなどしていました。(その後出版社に企画を売り込みましたが、結局出版は叶いませんでした。)

そんな折、本業の医療法人で新型コロナの抗体検査キットを中国から輸入する話が上がり、私に調査の指示がありました。そして、中国で製薬業界の幅広い人脈を持っている中国人の知人に聞いてみると、2つの候補品をすぐに紹介してくれ、早速注文することになりました。これまで検査キットを中国から輸入した経験なんてなかったことから、そもそも輸入できるのか、粗悪品ではないかと様々な不安がありましたが、注文した検査キットは2週間ほどで無事に到着しました。無事に輸入できたことを確認した私は、試しに副業でも販売してみようと考えました。しかし、初年度に大赤字を計上し、両親から借りた100万円の資本金を使いきってしまっていた私には、検査キットを仕入れる手元資金が全くありません。そこで、発注金額の半額を前金でいただくという妙案を思いつき、ダメ元で再度プレスリリースを無料で配信してみました。

すると、プレスリリースの閲覧数が瞬く間に1万PVを超え、プレスリリースを見た多くの医療機関から注文や問い合わせが殺到しました。しかし、手元資金が少なく、多くの在庫を抱えることができなかったことから、少量を輸入しては完売し、また輸入するという状況が3ヶ月ほど続きました。一方で、本業の医療法人にも、企業や映画の撮影現場などから検査キットを使った出張検査の依頼が殺到し、対応に追われました。そのため、プレスリリースを配信してから3ヶ月が経過することには、あまりの忙しさに疲れ果ててしまいます。すでに副業としては十分すぎる売上が上がったこともあり、検査キットの正規代理店としての権利を他社に売却して最後の利益を確定させ、検査キットの販売をやめることにしました。

会社員生活の閉塞感を感じて二度目の起業を決意

新型コロナ禍バブルに沸いた検査キット販売の副業をやめ、副業により本業の年収以上の利益を手にした私は、久しぶりに訪れた時間的・経済的な余裕に浸っていました。一方、新型コロナ禍の継続により本業の上海ビジネスは依然として再開の目途が立たちません。給料泥棒と言われないために、本業での新たな役割を見いだせずにいました。そこで、これまで面倒だと思い避けていた、系列クリニックの管理業務を新たに担当することにしました。

しかし、この管理業務に大きな苦痛を感じてしまいます。海外での生活が長かったこともあり、日本の会社組織の慣習が全く肌に合いませんでした。また、副業でプチ成功をしたという驕りもありました。このまま会社員として精神を擦り減らすのがばかばかしく思え、早々に退職を決意。他社への転職も一時考えましたが、意を決して副業を本業にするという二度目の起業を決意しました。

2021年4月に、副業のために設立した合同会社を本業とし、初めて社会保険等の加入手続きを行いました。新型コロナ禍が収束していない当時、最初の事業に選んだのは、開始されたばかりの新型コロナワクチンの接種後に体内で形成される中和抗体を調べるための検査キットの輸入・販売です。国内で最初に輸入したのが当社でした。新型コロナワクチンに関する話題がメディアを賑わせる中、大きなニーズを見込んでの販売でしたが、残念ながら副業時代のようなバブルが再来することはありませんでした。

その後も新型コロナ関連のユニークな検査キットを導入したり、副業時代にお世話になったクリニックからワクチンの職域接種会場でのマネジメント業務を受託したりと様々な事業にチャレンジしました。未だ成功とは言い難い状況ですが、二度目の起業から今日まで約2年間、何とか生活を維持しています。

二度の起業経験で実感した副業・起業において大事なこと

以上のように、二度の起業と副業でのプチ成功の経験から、副業・起業をするにあたって大事だと思われるポイントを最後に紹介したいと思います。

<副業を成功させるポイント>

●ミニマムスタートを徹底する
副業を始めるにあたっては、とにかくイニシャルコスト(初期投資)を抑えるよう心掛けましょう。私のように副業をして大赤字を計上しては本末転倒で、副業をやる意味が全くありません。

●バブル到来に備えてビジネスの箱(法人・ホームページ)をしっかり用意する
副業と言えども、ビジネスである以上、需要が一気に拡大する時期が訪れる可能性があります。また、副業は必ずしもスモールビジネスである必要はなく、将来本格的に起業するための助走期間と位置付けることが重要です。そのため、将来を見据えてビジネスの箱である法人とホームページだけは最初からしっかりと用意しましょう。

●途中でやめない、やり続ける
副業は開始することも、途中でやめることも容易です。しかし、売上の有無・多寡にかかわらず、ビジネスにおいては常にアンテナを張り巡らせておくことが何よりも重要です。そのため、本業が忙しくなっても、副業でプチ成功しても、途中でやめずにやり続けましょう。

●本業と両立できるビジネスモデルを構築する
副業には、途中でやめない、やり続けることが重要ですが、そのためには本業と両立できなければなりません。副業を行うことで過度に時間を取られたり、体力・精神力を奪われることのないよう、本業と両立できるビジネスモデルはどういうものかをしっかりと考え、実践しましょう。

<起業をするにあたって大事なポイント>

●ミニマムスタート・ミニマムマネジメントを心掛ける
VC(ベンチャーキャピタル)等から豊富な資金提供を受けられる場合以外、多くの起業家は自己資金や親族・金融機関からの借入により起業しなければなりません。また、起業直後から経営が軌道に乗ることも非常に稀です。そのため、起業にあたっては、とにかくイニシャルコスト(初期投資)とランニングコスト(運用経費)を抑えることが事業の継続に何よりも重要です。私の一度目の起業の失敗のように、起業当初から都心に事務所を賃貸したり、従業員を雇用したりするのは起業家生命を短命にしてしまう可能性が高いので特に注意しましょう。

●起業する前に自分の本当にやりたい仕事を見つけておく
自分で起業したビジネスを継続する上で最も重要なのが、事業内容に迷わず、長く情熱を持ってやり続けることです。そのためには、起業する前にしっかりと「自分の本当にやりたい仕事」について考え、見つけておかなければなりません。かくいう私も、一度目はもちろん、二度目の起業においてもやりたい仕事についてフラフラと悩み、ビジネスが停滞した時期が長くあり、経営面でも非常に苦労してしまいました。起業後にこの本質的な問題で悩んでいては、経営どころか生活も成り立ちません。起業する前にしっかりと自分を見つめ直しましょう。

●オンリーワン・ナンバーワンになれる要素を持つ
ビジネスで売上を継続して上げ続けるには、お客様に他社ではなく自社から買ってもらえる理由(ユニークセールスポイント・USP)が必要です。このUSPを持つための最短の近道が、オンリーワン・ナンバーワンになれる要素を持つことです。起業にあたっては、他社にない、オンリーワン・ナンバーワンになれる要素をしっかりと考え、ホームページ等で適切に発信しましょう。

顧客を獲得し続ける(売上を継続して上げる)方法を確立する
当然ですが、ビジネスを継続するためには、顧客を獲得し続け、売上を継続して上げていかなければなりません。そして、これは資金的に余裕のないスタートアップ時には特に重要です。起業をする前に、もっと言うと安定した収入がある会社員をやめる前に、顧客を獲得し続ける(売上を継続して上げる)方法をしっかりと考え、テストマーケティング等により試し、確立しましょう。私の一度目の失敗のように、起業した後に初めてホームページを開設し、集客を開始するというギャンブルは絶対にやめましょう。

会社員時代に「稼ぐ力」と「節約する力」をしっかりと養っておく
会社員として、自分で新たな顧客を開拓して売上を作ったり、オンリーワン・ナンバーワンな商品・サービスを開発するといった「稼ぐ力」がないようでは、そもそも起業しても成功する見込みはありません。一方で、会社員時代に「稼ぐ力」があっても、お給料を全額消費してしまうなど「節約する力」を持ち合わせていないと、起業後の不安定な経営状況を乗り越え、ビジネスを継続することができません。私は、両方の力を持ち合わせていないのに勢いだけで一度目の起業をした結果、その後約10年間にわたり非常に苦しい生活を強いられることになりました。このようなことにならないよう、会社員時代に「稼ぐ力」と「節約する力」の2つの力を養った上で起業しましょう。

一覧に戻る